原糸の場所とロットを現場で記録する
冨士経編では、紙の情報が最新ではなく、原糸倉庫の状況を正確に把握する人が限られていた。同社はタブレットで種類や保管場所、日付を登録し、ロットから検索できる倉庫システムを導入。公開事例では探索や照会の手間、記録ミスが減ったと報告されている。一方で、入力を後回しにする運用の課題も残っている。
アトツギ経営者も、担当者の記憶と在庫記録が食い違う場面を確かめ、原糸を動かしたその場で更新できる運用から試してはどうか。
出典:冨士経編株式会社/ 原糸の倉庫管理を機に若手主導の DX 推進へ
https://dxfukui.jp/case/pid1337/
工程を移動する糸の情報をつなぐ
タケヤリでは、工程や保管場所ごとに手書きで在庫を管理し、急な注文や工程変更のたびに帳票を突き合わせていた。同社は原糸や合糸にQRコードの札紙を付け、投入・払出・移動・出荷時に読み取る仕組みを採用。導入記事では、在庫確認にかかる時間が月30時間から10時間に減り、PCへの再入力もなくなったと報告されている。
アトツギ経営者も、工程をまたぐたびに在庫を書き直している箇所を洗い出し、移動と記録を一緒に行う方法を現場と検討してはいかがだろうか。
出典:株式会社タケヤリ/ 複数箇所の在庫を NAVINECT クラウドで一元管理
https://navinect.jp/case/takeyari.html
反物を一つずつ数える棚卸を見直す
藤絹織物では、職工が反物を一点ずつ目視で確認して棚卸をしていた。同社はRFIDとハンディターミナルを導入し、反物を一括で読み取れるようにした。中小機構の取材記事では、4時間かかっていた棚卸が10分で終わるようになったと紹介されている。入出庫や展示会・貸出時の管理への拡張も予定している。
アトツギ経営者も、数える負担が大きい在庫を一種類選び、現物とデータを照合しやすい方法を小さく試してはいかがだろうか。
出典:藤絹織物株式会社/ 棚卸時間を 95 %削減。創業 100 年の大島紬メーカーが実践する DX のリアル
https://digiwith.smrj.go.jp/cocoapp/case/fujikinu.html
まとめ
3社に共通するのは、在庫の場所や数量を「詳しい人に聞く情報」から、現物の動きに合わせて記録し、ほかの人も確かめられる情報へ変えたことだ。入力のタイミング、工程をまたぐ受け渡し、棚卸の数え方を整えることで、担当が変わっても在庫確認の仕事を引き継ぎやすくなる。
AIで在庫確認の仕事をどう変えられるか考えるアトツギ経営者の方は、まず現場で探し直しや数え直しが起きる場面を一つ選んでみてはいかがだろうか。その原因が記録の遅れなのか、場所の不明確さなのか、照合作業の負担なのかを整理すれば、何から変えるべきかを具体的に話し合える。

